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続く- 01 -
コヤママサシ


5月14日

帰宅後、欠けた集中力と無力感。言葉の見当たらない怒りが混ざり合う。
ふっと若林区の水面に自分の影が見える。においが手から消えない。

日常の営みを超えた視界に、時間の感覚も、感情の起伏も「空(くう)」に近い。

連日、報道で流れた映像。それも同じ映像が同じ時間帯に悲しみのコメントと共に繰り返し。
連日、ネットが流す怒号と投げやりな言葉と皮肉な書き込みの途切れる事のないスクロール。

連日、この国が選択した言葉が書き込まれた原稿を読み上げる目と平坦な言葉への深い怒り。

連日、共鳴、共感、反感、違和感、失望感、恐怖感が、通常の何倍も同時に感じ続ける疲労。

連日、記者の「してやったり」の声質と「うろたえる人間」を見る自分への、いやな罪悪感。

真実を知りたい。何がおこっているんだ。情報を知りたい。セレクトした情報はいらないよ。


 心のダメージは続く。

余震。ざわざわした毎日。ひとり取り残された感覚。ネットの汚い言葉を読んでしまった目。

「復興」という言葉を聞くたびに、演出された文字を見るたびに心の奥に鋭利な棘が刺さる。

話せないから並んで歩く。
声を出して泣けないから動く。








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